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甲状腺検査の結果について
→ http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-20.html
・【一巡目検査(いわゆる「先行検査」)】の結果に大きな変化がない。2013年度被検査者のうち二次検査で細胞診を受けて甲状腺がん(「がん疑い」)と判定された人が1人増えて、合計112人になった。(良性1人を除く。)
なお前回から今回までに新たに甲状腺手術を受けた者はいない。
・【二巡目検査(いわゆる「本格調査」)】で甲状腺がん(「がん疑い」)と判定されたものが10人増えて、25人になった。
なお前回から今回までに甲状腺手術を受けた者は1人(「乳頭がん」)。
★ 一巡目検査で甲状腺がん手術事例の患者は98人。受診者を分母に採り10万人あたりの発症率(罹患率)を計算すると、全国平均(1975~2008年)の40倍弱の罹患率です。これらは手術事例ですから、小さい甲状腺がんとか「一生発病しない甲状腺がん」ではありません。臨床事例またはそれに近い進行状態の甲状腺がんです。
98人÷330476人×10万 = 32.6(人/10万人)
全国平均罹患率(15~19歳) : 0.88(人/10万人)
【気になること】
一巡目、二巡目の検査で、「二次検査の対象」と判定された人のうち細胞診を受けた人の割合と、細胞診を受けた人のうちで甲状腺がん手術を受けた人の割合が、年度ごとに下がっています。一巡目検査からすでに2年以上経ち、今後に新たな細胞診や手術を受ける人は多くないと思われるので、2013年度の細胞診と手術の事例数が少ないことは気になります。二巡目検査はまだ途中なので、これから細胞診と手術事例が増えるかもしれません。注目しています。
それにしても、『がんであるが手術するほどのレベルではない』というがんの割合が増えたので手術や細胞診が減ったのか? そうなら良いのですが、私が危惧することは「過剰診断」を理由に甲状腺がんの判定/治療基準を引き上げているのではないか? 結果的に、必要な治療が妨げられていないか?という点です。「過剰診断」が叫ばれ始めたのは、2013年度検査の二次検査や二巡目検査(2014年~)の時期と重なります。この間に、甲状腺がん手術を仕切っていた福島県立医大の鈴木眞一氏が福島県「甲状腺評価部会」で手術事例を公表し、『ガイドラインに沿った適切な手術だ』と主張しました。またその後、理由はわからないが健康調査検討委員会の担当をはずされました。
【北茨城市の甲状腺検査結果の公表】
北茨城市は、事故当時0~18歳であった市民に補助金を出して甲状腺検査を進めています。その結果が公表されました。自力の甲状腺検査を実施している自治体のうちで、A,B,C判定だけでなく「がん」の患者数も公表したのは北茨城市が初めてです。
→ http://www.city.kitaibaraki.lg.jp/docs/2015082500032/files/koujousenn.pdf
この公表結果の「がん」は、細胞診で見つかったのか?手術で見つかったのか?どの診断段階で判定されたのかわからないので、細胞診の段階とします。 『チェルノブイリ事故の際の甲状腺がんは4~5年後から増加』という人がよくいるので、潜伏期間を4年と仮定すると、北茨城市の子どもの甲状腺がんの罹患率は、
3人÷4777人÷4年×10万人 = 15.7(人/10万人)
全国平均罹患率(5~24歳): 0.50(人/10万人)
実際にがんが見つかったのは、2014年度検査の3593人(主に、事故当時5~18歳)の中からなので、
3人÷3593人÷4年×10万人 = 20.9(人/10万人)
全国平均罹患率(10~24歳): 0.64(人/10万人)
いずれにしても全国平均の30倍以上の多発です。ただし分母となる受診者数が5000人程度なので少ないという欠点があります。
そこでこの公表データと、1年半前に環境省が公表した福島県外3県の甲状腺調査とを、罹患率でなく『甲状腺がんの発見率』で比較しました。環境省の調査は山梨、青森、長崎県で行われ、被検査者数が4365人でその年齢が3~18歳であり、北茨城市の調査とよく似ています。甲状腺がんと判明したのは1人でした。(詳細に見ると両者に違いがあるので、あくまで大まかな比較です。)
・「3県」の甲状腺がん発見率は、 1人÷4365人×10万 = 22.9(人/10万人)
・北茨城市の甲状腺がん発見率が「3県」と同じと仮定してポアソン確率を計算すると、
北茨城市の3593人中がんが0人見つかる確率:43.9%
1人見つかる確率:36.1%
2人見つかる確率:14.8%
3人見つかる確率: 4.1%
3人以上見つかる確率: 5.1%
「3人以上見つかる確率」は5%、1/20ですから、北茨城市と「3県」の発見率が同じである可能性はとても低いです。調査規模は小さいが、環境省のデータに基づいても福島周辺の地域で甲状腺がんの異常多発が推定されます。
なお福島県の甲状腺検査と「3県」調査の比較は、少し古いですがここにあります。
→ http://no-nukes-hokusetsu.blog.so-net.ne.jp/archive/201404-1
【北茨城の放射能】
それにしても、北茨城市の甲状腺検査は福島県と違い、希望者が受ける制度です。しかも受診の際には事前に「甲状腺の講習会」を受けることを義務づけられます。それでも受診対象者の6割以上の市民が自ら受診するのですから、市民の放射能の関心と危機感はとても強いのだと思いました。北茨城市だけではないはずです。
友人に教えてもらったデータです(NHKのHPより)。事故直後(3/15)の北茨城市の放射線量は、福島市やいわき市と同程度、郡山市や白河市の2倍でした。この時期の放出放射能にはヨウ素131が多量に含まれていました。
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